発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌「あたふた」 Vol.101 2005.8月号

「ハイロはアピアのお酒です。70年ものだよん♪」
黄色い勢力(元ハイロスタッフ/瞬刊ハイロ編集長)

 日頃アコースティックギターの音色に包まれているアピアですが、たまに暗闇からピチピチピチピチッって何かが弾ける音がする。知ってた? アピアと共に35年。無差別無審査の公募を軸に、随分長く続けて来た。気付いたら日本最長だ。物好きな草上映会ファンと、フィルムフェチが、顔ぶれを変えながら今も集まり続けている。公募なので日によって当たりハズレがある訳だが、内容が固定されない良さがある。ずっとパン粉モミモミ状態。きっとモミモミしてるのが好きなんだ! 最年長の魔除け面のオッサン(70年創立メンバー)は今年も現役司会。魔除け面に驚いて客が逃げ帰るなんて珍芸がたまに見れる。最年少の小林由美子は、5月に自らオリキ(若手ジャニーズの追っかけ)であることを暴露した二十歳そこそこ現役女子大生。スターウォーズも知りません。おいらは最近『瞬刊ハイロ』という無料パンフを作っているのだが、その中でメンバー全員が同じテーマで原稿を寄せる『ハイロの肖像』というページがある。7月に“スターウォーズ”をテーマにしたところ、世代ごと全く違う反応が出て面白かった。小林さんなんてタイトルが「拝啓、スピルバーグ様」ってオイ!スターウォーズはジョ−ジ・ルーカスだよ。思わず笑ってしまった(涙)

 時代がシラケに向かって行く只中で、ゲバボウをカメラに持ち変えた時代。雑誌ぴあの台頭から始まった自主映画ブームの時代。客が来なくても待ち続けたフリースペース時代。ハイロはいろんな時代を歩んで来た。最近の看板企画は『鈴木研究所』ね。原点に戻って、塗ったり貼ったり削ったり…。日夜、フィルム弄りを続けている。「櫂を入れるのは仕込みの時だけ。後の発酵は酵母の力に任せる。ほら、自然に対流が起きているでしょう。手を加えすぎて旨味を崩したくないのです」と大房代表が言ったとか言わないとか。なるほど、ジェネレーションギャップなんか飛び越しちゃって、スターウォ−ズなんて知らねえよ馬鹿野郎♪…いい具合に発酵しているようだ。「ここまで熟成して来ると撮影しないでも映画が出来てしまいますね〜」と鈴木所長。自身の自家現像フィルムは今年当たり年。深みのあるコゲ茶を映し出している。お馴染みの“先が丸くなった器具”は謎のまま健在。新たに線香を取り入れて1コマ1コマ焦がした穴が、焦げ茶フィルムとマッチング。35歳にして急に大人の香りが漂い出した。唯一の研究員、角南くんは今年大学出たばかり。桜の花びら1枚1枚を1コマ1コマ貼り付けたフィルムや、水の1滴1滴を1コマ1コマ閉じ込めたフィルムなど、無垢で無謀な挑戦は観客の笑顔を誘っている。また、角南くんは『フィルムピクニック』という“おまけコーナー”で毎回フィルムを無料配布している。是非持ち帰ってみて欲しい。回収されたフィルムは2月に一本にして流します。長い人生、一度ぐらい映画のフィルムにチマチマ傷付けてみたっていいじゃな〜い!ついでに流してみちゃえばいいじゃな〜い!こんな体験アピアだけ!特にアピアで唄うミュージシャン方には是非足を運んでもらいたいの。気に入った作家を見付けるのも好し。自分で作って流すのも好し。「観客は1000円。作家は10分1000円〜」でお待ちしております。そろそろライブとハイロの枠を越えたアピアブレンドが楽しめる頃だと密かに楽しみにしているのである。100%アピアを味わうならハイロまで試してみないとね♪
 日曜の昼、桜丘町を行くと甘い香りに誘われる。米が麹の力で酒に、メリケン粉がイーストの力でパンになる瞬間を、アピアで目撃できる。ハイロは酵母が生き生きしております!


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