発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌 Vol.119 2007.2月号

「曇天のソラにギターの雪が舞う…」

福井県2DAYSライブ ツアーレポート
川上テルヒサ

 「前日(16日)」
東京に活動の拠点を移したのは2年前の事だった。「志す事」があり上京したのはいいが.やはり現実は厳しかった。行き詰まる。そんな時.いつもパワーをもらうのが故郷。日本海に面する.北陸.福井県。
2006年6月9日.思いで深い出来事があった。「独パン野郎.北へ…」独唱パンク主宰・チバ大三さんの故郷凱旋ツアーに参加した事である。大御所・三上寛さんの存在も大きかった。数々のドラマが生まれた素晴らしい旅。いつか僕も…。その願いは叶い.お二方から「よし!やろう!」との返事を頂いた。
12月17日「生物実験レポートvol.3」.18日「独唱パンク福井編vol.2」川上テルヒサ故郷凱旋ツアーとなったのです。
 前日にチバさんと僕は東京を出発.マックス号も健在だ。寛さんとは当日に福井駅での待ち合わせ。その日は.僕の実家で一泊。久しぶりに再会した18年来の親友タケシに出たばかりのボーナスで焼肉をたらふく御馳走になった。有難う!美味しかったよ!この日.チバさんと僕は.地酒をディープに飲んでしまい「打ち上げのリハーサル」は終了。酒を控える事もツアー成功の秘訣なんだと痛感させられたのは翌朝の事でした…(笑)

「初日(17日)」
ツアーに出ると新しいステージとの出会いがある。音.床.天井.照明.馴れ親しんでいるいつもの感覚で望む訳にはいかない。ステージの持つ力と.ミュージシャンの持つ力。そして.PAさん.スタッフさん。「はじめまして。よろしく」そんな言葉からリハは始まる。
初日は.福井県越前市(旧.武生市)にある.武生クラシックス。古い倉を改築した建物だ。土壁に石畳の床.天井の一部は2階まで吹き抜けという独特の構造。ベテランの寛さんでさえ「音が難しくて面白いよ!」とリハ後に一言。チバさんの足鈴はいつもよりさらにカン高い音を出していました。
今回の出演者は両日ともに同じ5名。地元福井からは.ベテランの弾き語りミュージシャン.ROYAL FISH(アピアに不定期で出演中)最近弾き語りを本格的に始めた若手.石黒タカシ。そして.三上寛.チバ大三.川上テルヒサ。半年ぶりの三上組である。外では.雨がアラレに変わる悪天候。これぞ北陸の冬だ。そんな中.イベントはスタートしたのです。この日は.ROYAL FISH.チバ大三.石黒タカシ.ゲスト・三上寛.川上テルヒサの順番。熱狂的ファンの方が.寛さんのライブ中に野太い声で叫んでいたのが印象深かった。出演者全員.目立つトラブルもなく(チバさんのギターが.リハの時に不調気味で心配だったのですが…)無事終了。片しを終え.宿のある福井市へ移動し.その後.馴染みのホルモン屋で打ち上げモードに突入したのです。

「2日目(18日)」
前回の東北ツアーで学んだ事がある。旅といえば温泉! と.言う訳で.入り前に三国町にある.日本海を眺めながら入浴出来る.町営の天然温泉施設「ゆあぽーと三国」へ行った。馴れ親しんだ海も.この日は何故か違って見えた気がした何故なんだろう…。
2日目は福井市街にあるライブハウス HALL BEE。20年以上続く老舗のハコだ。そして.いよいよ「独唱パンク福井編」昨日と同じ5名が出演する。ステージがかわり企画もかわる中で.出演者はどのようにかわるのか…。
この日のトップは.チバさん。ファズを強力にきかせハコを圧巻!独パン主宰の実力を十二分に発揮するステージ。赤い照明がこんなにも似合うとは…。新しい魅力を発見しました。
2番手は.石黒タカシ。馴れているハコのせいではない.別の落ち着きを出したステージ。真っ直ぐな歌は見ている人全てに響いたはずだ。良かったよ。
そして3番手.ゲストの寛さん。場内には.白髪混じりの方や.トレンチコート姿の方が多数。「30年以上お待たせしました」の言葉に初来福のドラマを観ました。4番手は.ROYAL FISHさん。昨日よりも.さらに「優しさ」をまえに出したステージでとても素晴らしかったです。ベテランの技.さすがです。若さん!
最後は.僕。この日は.思いきりやれた気がする。久しぶりの故郷のハコ.何度も立ったステージにまた一つ「答え」を頂いた。有難う。
こうして.イベントは無事終了。打ち上げへと…。こちらの方も昨日と同じホルモン屋(深夜遅く.他に営業している店がなかなか・爆)。終われば午前5時。その1時間後.寛さんは.東京へ帰られて行きました。恐るべし体力です。参りました!そして.お昼にはチバさんも東京へ…。少しさみしい気持ちになりつつも無事に2日間を終えた事に喜びを感じ.僕も東京への帰路へ。有難うございました。

「東京にて(後日)」
郷帰りライブを終え.こうしてツアーレポを書いているとたくさんの「宿題」が出た事に気付く。
企画する難しさ.その中で出演する慌ただしさ.ゲスト.出演者.お客様への対応。まだまだ始まったばかりだ。
寛さんから頂いた言葉。「大変だろうが.ミュージシャンは皆.通って来ている道なんだよ.テル!」嬉しかった。チバさんから頂いた言葉。「独パンと掲げる以上.そのステージは対等なんだよ!」その言葉に.通算80回に迫る独唱パンクの「旗」を見た。そして.福井の番人 ROYAL FISH さん「負けんなま!頑張れ!」.愛弟.タカシの「楽しかった.また出演したい!」が.今でも脳みそに響いてます。お疲れ様でした。2007年はイノシシ。この旅はまだまだ続く。三上組、次はどの街.故郷へ…。.黄色い車で.また突っ走って行きましょうね!
組長。兄貴!! (笑)

川上テルヒサ
チバ大三

 テルヒサの故郷への執念が、今回のイベントの核だった。独りの“本気”は、恐るべきパワーを放つ。福井の海は荒れ、空は泣き笑いを繰り返した。テルに煽られた競演者・関係者・御客は、ちっぽけな我を見つめずにいれない“事件”であった。俺自身、福井が盛岡になったり東京になったり、不思議な体験をした。チバの故郷・盛岡に続き、テルの福井。寛さんの御理解にパワー貰いつつの、故郷凱旋『独パン紀行』。“本気”というにはまだまだお互い到らぬ点もあったが、とにかく成した。これはデカイよ。成したから、次が始まる。
あなたの故郷でも『独パン紀行』はいかが?今の便利な日本は狭いもんだ。が、故郷は深いぞ。

三上寛

 独パン遠征ライブ第二弾福井版は、初遠征盛岡・秋田ツアーの最中に出たアイデアだった。千葉大三の故郷凱旋公演に刺激を受けた川上テルヒサが『オレもやってみたい』とふともらした事がきっかけになった。ミュージシャンにとって故郷での演奏は特別な意味を持つ。ステージを降りた日常生活の中でのガンバリと、実際ステージに上がって高めなければいけない集中力は本来全く別のもの。その全く別の二つの気持ちを同時に表現しなければいけない難しさがある。けれど初回の大三も今回のテルヒサも果敢に挑み成果を納めた。拍手を送りたいと思う。お疲れ様でした!

ROYAL FISH

旅の歌 話し乱痴気 飲み干せば 
次は何処ぞへ 華が咲く

石黒タカシ

 難しい事を言うのはあまり好きではないので、こう言います。楽しかったです。本当にそれだけです。一緒に出演した方、皆が尊敬できる方々でした。ありがとうございました。


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