発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌 Vol.125 2007.8月号
ようこそてんぐのさとへ!
天狗の里

 猛暑猛々しい今年の夏。庭には溢れんばかりの緑が生茂り、様々な生態系が、目と鼻の先で育まれております。皆様、お変わりなく過ごしていますか? 私天狗ノ里の住職と申します。今は多く失われ忘れられてしまった、かの天狗ノ里を、心地よい流れのあるギターラとポエットで表現します。渋谷アピアで体験する心地良い30分間のLittle travel 記憶の宿を訪ねる旅でございます。是非一度、ご家族揃っておいで下さいませ。  

沖の鳥

 まっすぐ沖の鳥がおちる。荒れた海へ魚をとりに、次々とおちていく。うちつけ飛沫く真っ黒な海面に、どろどろばりばりと太鼓の音が轟き。冷たい海の底へ通じる大きな口が開く。その下では、何千何万という魚の群れが目まぐるしく行き交い。冷たい海流にのって、次の土地へ向かう。
 沖の鳥はぐるぐる上空を旋回した後、降り注ぐ矢のように急降下でおちていく。嵐が止むまで、うちつける大粒の雨と飛沫に羽を濡らし、沖の鳥の漁は続くのだ。 
 宇宙の果てまで追いかけてくる生命が、俺達を作り出してしまった。「縦横高さと時間」って奴に俺達は、永遠に閉じ込められちまった。音の無い世界で鳴り響く音が、俺達の鼓膜をやっつける頃。広い海原で今日も、沖の鳥は魚を捕り巣へ持ち還るのだ。
 使いまわされた言葉にもう一度灯りがともり、死後の世界がぼんやり見えた。人里離れた山奥で遺伝子の綱を昇り、太古の記憶の箱を開ける。オフィスビルの窓という窓に夕焼けがプリズムする。そして今、列車が滑り込み、すし詰めにされた虚無を吐き出した。「本当になりたかったものはこんなものじゃない、もう時間を無駄にするのは真っ平ごめんだ。」と
 そして嵐は止み、大きな月が出た。沖の鳥は翼を休めている。ロックコンサートが終わり、帰りの山手線に、熱気の余韻を持ち込む。
 くたくたの体、家の鍵を空け、シャワーを浴び、眠ろう。明日も仕事に行こう。


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