発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌 Vol.116 2006.11月号
「われ生きるゆえにゴミあり」

小池真司・誌上ギャラリー
「冬のサーファー」

僅かな金を持って街に出かけた
何かのかわりに三十年も前のCDを買い
何かのかわりに楽器屋で
  小さなギターを弾いた
何かのかわりに誰かに
  エレベーターを開けてやり
よほどボーッとして見えるのか
判らないのに道を訊かれ
判らなかったのに礼を言われた

ウイルスと人間に怯えながら
震える地球に怯えながら
不安という見えないビルが
雲のあたりまで突っ込んでいたが
若い女の子達は可愛いかった
或いは可愛く見せようとしていた
それすらも可愛いと思うほど
俺達は或いは疲れていた

何かのかわりに 暮れ方の公園に立ち寄り
缶コーヒーを飲んだ
紅くなった葉むらの 
  ひとところだけ夕陽が射していた
かくれんぼする恋人達を 
俺は掃除夫の隣で見ている
この宇宙につながる術が他に無いなら
人は決してそれを手放さないだろう
それは或いは一本の
  古びた箒にすぎないのかもしれない
けれどそれを常に 拾う誰かがいるのだろう

この寒いのにあいつは 
今日も海にいるだろう
生きるために
ただ生きるために
何かのかわりに
今日も海にいるだろう

「首都」

俺は首都だ
俺の手足は捩れのたうつハイウェイだ
俺のペニスは母親を貫いて海の向こうまで
俺の神経はインターネットで二十四時間狂ってる
俺の血は汚染されている 
俺が食うのは人間だ 最低の食べ物だ
俺は首都だ 
俺は俺を滅ぼすために汚れ続ける
やがて狂った海が俺の血管に流れ込む
俺の目は停電し俺の脳は破裂する
俺は首都だ ニセモノだツクリモノだ
目から地下鉄が飛び出してくる化け物だ
女の首に縄を引っ掛け黒い馬の尻をはたいた
女は俺の血管の中を走り回りながら死んでいった
俺は首都だ 俺は被造物
あんたらの乗り物であり道具であり
自立するゴミ袋 あんたらの実体だ
鴉たちが俺を祝福する
それは俺の内臓を食う あんたらの食いカスを
俺は首都だ 俺を呼べばこの首都が応える
俺をバカにする奴の頭に
     高速からトラックが落ちてくる
俺は何処にでもいる 覚えておくがいい
死ぬ事も生きる事もない俺は街中の何処にでもいる
俺達でない者は畏れよ
俺達は首都だ 傷口からゴミが溢れ出し
それを固めて創られた新しいアダムとイヴ
だから俺達は互いにコンビニの
弁当のフタのように透けている
ただお互いを食い尽くして

子供靴 廃工場に溢れゆく
       吐き戻す如 溢れゆくなり

ふくめば起ち溢れるでしょう何度でも
      血を噴くまでの凌辱にあり

ねえ見える?私が見える?誰からも
      何からもそして俺もおまえを

公園に何故化け物が育つのか
       女が女を埋めながら問ふ



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