|
|
|
|
はじめに接待するのは川底の水草の声。緑生い繁る陰毛の丘。睫毛の溜め息。死んだ筈の獣たちは高らかにうたう。聖タカノッポの歯痒い帽子の中に入れるのは石か?大地はコンクリイトに埋められて苦しんでいるのは本当だ、でなけりゃ石が、あんな脳みそ流すわけがない。
はじめのはじめは誰が決めた?髪の毛の中の暗闇に潜む妖怪魚の金縛りの瞳は涙も凝固して、アイスクリイムもつくれやしない。ゐにしえの朝鮮蛙よ、盥の水に映るタオル布巾は誰のもの?
はじめの地平は垣根越しでは見えず探偵は試行錯誤の溜め息、時計は揺れて、回転するチェスの駒。軸を引っこ抜いてホラ、洞穴がある。これははじめの通路だ、星も潜ってる、浮き輪を探して出かけよう。
船の路上であなたはぶつかる、何に?それは知らない、砂糖まぶした円盤だよ、きまって。雑誌は破れて恥知らずの会話の切れ端に飾られた。水の流れは下に落ちるその速さ、音楽は満ちることが無いので女たちには歯痒いのだ、せめてバケツの尻の栓は締めて青空をいつでも仰げるように。
・・・何となく疲れたので女は身を横たえる。美しい骨の中に。岩肌の冷たさが心地よいので女は臍を露わにする。はじめに戻って、泳ぐために。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
おわりの話
|
|
|
|
おわりになって壇上からあかりが射し込んだ。おわりの力はつよかった。茶碗の欠片を踏んで神経が目を見開いた。ああ彼は裸足だ。血は緑色に澱んで濁っている。山々を越えるには難しいだろう。頭の上に雀が落ちる。額を滑って鼻の先で目が合う。雀の瞳に泉で泳ぐ少女が映る。それはとても強引だ、ふと見渡すと雑居ビルディングの屋上だ。夕暮れの路、おわりは寂しいのであなたは花束を抱えることにする。マネキン人形たちの葬列に参加するのか。虚しさが込み上げる。
あの子はどこへ行ったの?青い洗濯物を両手に抱えたあの子だよ。黒ゴム長靴の輝き。脛がみえる。あの子の顔、みえる。さらさらの髪の毛。洗濯物は飛び立ってたなびいて行く。。木の枝に引掛かって小鳥が啄ざんでいるものもある。空中で解けて海に戻るものもある。
・・・空間の廊下に佇む黒い人影。裸足で木目の感触をたしかめている。そう、あの感覚。わたしはひとりで襤褸布を纏い何も持たずあたたかいその呼吸。おわりの闇へ溶け込むには他人はいらない。しかし虚無の崖上はいつでも用意されているのだから、おわりになって悲しくなるのも、おかしな話だ。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|