発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌 Vol.110 2006.5月号


永山亜紀子誌上ギャラリー
● 6月9日(金) pm10:00 start
中溝俊哉(ob,EH,p)+石塚俊明(dr)+カリマタミチオ(fl)+永山亜紀子 (poet)
前世紀前史抄

ことばの森の
彼と彼女の性愛の
在り処を訪ねに行ったまま
その娘は帰って来なかった

本をひらけばいつでも
エロスの濃霧が立ち込め
内も外も白くする
エロスの濃霧に満たされた
おおきな黒いミルク壜を両手で抱え
娘はいつまでも枯れ葉の海の中へ
座っているのだった

ことばの森の
頁をひらく
彼と性愛の濃霧が
見えない右手となって
おまえをおいでと誘い込む
部屋は頁の中に吸い込まれる

彼女を繰る彼
彼女は官能の糸で男たちを
搦めとり食べ尽くす
エロスの力は荒廃してゆく
その犠牲を存在の糧にして
冷酷なわらいを
波立たせている

     (戯れ唄)
彼と彼との共振の現場に立ちあっている
彼女は 恋の案内人
斗いの前夜の秘事を司る魔女になる

僕は失われるのか
太陽を僕は望んでいない
いない?
ほんとうだろうか
記録が残る
僕らの苦闘の轍は時空を超えて甦る
地球の吐息をたしかめる者の頬が
必ず通らねばならない轍として
ならば僕はどうすればいいのか
知の光の一条となって
彼女の脳髄を下降するのだ
そのとき彼女は語り始める
僕が彼女でないことは、消える
彼女が僕でないことは、消える
そして子供が生まれる
児らは記録し始める


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