発行・ライブハウス/渋谷アピア
アコースティック情報誌 Vol.109 2006.4月号
東條圭の取り扱い説明書

 
歌を唄う事は苦しい。けれど唄わない事はもっと苦しい。だから唄う。
 音楽は僕にとって呼吸であり、睡眠であり、恋愛だ。
小学生の頃、学校で一番足が早かった僕はオリンピックで金メダルがとれると思っていた。走る事が全てだった。呼吸であり、睡眠であり、恋愛だった。けれど6年の夏に初めて抜かされた。中学生になると当然もっと早い奴が現れた。高校生になり走ることをやめた僕はだんだん苦しくなった。ギターを弾いて曲を書いた。音楽が陸上の変わりになり日常になった。そうして書きためた150曲を、いつしか東京で唄っていた。
 上京して2年。新宿駅で迷う事もなくなったし、東京特有のせかされる様な歩き方にも慣れた。けれど僕は相変わらず呼吸をするように音楽をしている。友達に良くマイペースだと言われる。6畳の部屋で紡いだ言葉は、形になる事もあれば、欠片のまま消えてしまう事もある。
形になった曲の一つ「ALL DAY」のレコーディングは深夜から始まった。楽器録りはスムーズに終わり、予想通り僕の歌録りにほとんどの時間を費やした。全ての行程が終わったのは午前8時を過ぎていた。
 僕は唄が下手だ。けれど音楽をやっていくうえで、唄の上手い下手は重要じゃないと思っている。大事なことは他にある。例えば絵を見て素晴らしいと思える事。バッハを聴いてロックだと思う事。本当に良い物を良いと解る事。そしてその思いをカラダ全体で表現する事だと思う。唄が上手いにこした事はない。けれどそれだけじゃダメだ。そんなことを言うのは自分が歌が下手だからかなあ。。

「サポートの二人と渋谷アピア」
 僕は歌が下手だけど、サポートでコーラスをしている佐藤君は天才的に上手い。
 ライブの直前に歌詞を渡しても、ハモりを付けて本番ではきっちり唄ってくれる。人の半分の時間で人と同じ位出来てしまう。彼は器用なのだ。それは歌だけでは無く、日常にも表れている。先生や先輩と話している時、ライブのMCで急に話題をふった時の対応。いつも良いテンポで話しが進む。
 もう一人ギターでサポートをしてくれている山岸君。彼の魅力はその笑顔と人間性だ。僕は彼の事を悪く言う人を見た事が無い。一緒に音楽をやろうと思える条件はテクニックじゃなくて、人だ。山岸スマイルには何度救われただろう。花の市場に就職する彼は、新しい環境でも良い人間関係を築けると思う。
 そんな二人と一緒に出演している渋谷アピア。アピアでライブをするのは居心地が良い。聴く側と唄う側の距離が遠過ぎず、近過ぎず丁度良い。アーティストとオーディエンスが良い意味ではっきりわかれている。
去年の冬、たまたま見つけたアピアのホームページ。そこからいっきに広がった世界。今年の3月で1年になる。伶育さんを初め、様々な人と出会えた事に感謝。

 一緒に活動してくれるミュージシャンを募集しています。ドラム、ベース、吹奏楽系など。
http://www.geocities.jp/ktp_ssw/index.html



P1 P2 P3 P4 P5 P6